タイトル | ラクダ使いと王子の夜 | |
著 者 | 緒川 千世 | |
形 態 | コミック | |
レーベル | ビーボーイコミックス | |
出 版 社 | リブレ |
何故これを混ぜちゃったんだろう・・・。
凄く純粋なお話と凄く穢れたお話、そんなものが一緒くたに収録されたイメージを受けた「ラクダ使いと王子の夜」。
それでは、レビュー開始。
穢れた物語の中に浮かぶピュアな物語
ショートストーリー6編が収録された「ラクダ使いと王子の夜」。
管理人は一言いいたい。
コレ、何で混ぜたの・・・?
確実に、いや、思い切り浮いている話が表題作なんですが・・・。
よりによって、何故コレとコレ・・・と言いたくなるようなラインナップです。
短編集なので、さらっとそれぞれの作品を簡単にレビューします。
「溺れる魚」
水の中 気持ちを沈める
この瞬間が好きだ
主人公の高校生・岸(きし)は、毎日水泳部で水の中に潜っている。
子供の頃から口論の絶えない家庭に育った彼の避難場所は、いつも風呂場。
外界と隔離された水の中に潜るのが癖の彼は、本音を沈めるように水の中に潜る。
そんな岸に構ってくるのは、同級生の宇佐美(うさみ)。
俺は俺を好きな人がきらい
女を引っかけまくるくせに相手が自分を好きになったらすぐに捨てるという噂の彼に、いつの間にか恋をしていたことに気付いた彼は 。
「ラクダ使いと王子の夜」
表題作。
とおいとおい国の大きな砂漠に生きる小さな人々のお話。
砂漠をいくキャラバン・青の民のカマルは、村の中で一人だけ肌が白く肌が弱く身体が弱い為、自分のことを”足手まとい” と思っている。
父親はなく母はとうに亡くなって、ラクダのサディークが唯一の理解者。
そんな彼が砂漠で倒れたアルファドを助けたことから物語が動き出す 。
心優しい主人公の物語は、まるでおとぎ話のように優しい物語でした。
巻末にショートストーリー「ラクダ使いが消えた朝」収録。
「いびつな欠片」
僕にとって弟は
生まれた時から
自分の地位を脅かす
邪魔者でしかなかった
受験を控える高校生・拓海(たくみ)のモノローグから始まる物語。
容姿の優れ、優秀だった弟・実咲(みさき)は、兄に欲情する異常者。
だが、それは3年前に拓海が彼を壊したからだった 。
思うままにならぬ現実の中、どこまでも歪んだ兄弟の関係を描いた物語。
陰鬱で病んでいて救いがない物語ですが、作者いわく「ハッピーエンド」。
「くさった螺旋」
高校の三者面談から始まる物語。
主人公の小金井中(こがねい あたる)の父親は、人気実力派俳優の金井秀(かない しゅう)。
軽薄な中と厳格な父・秀との歪んだ関係は 。
螺旋=DNAですが、そこの”くさった” とついたなら、もうそれは察するしかないですね。
父親の憎悪を受け止める主人公に悲壮感はなく、それがまた一層気持ち悪かったりします。
「いびつな欠片」「くさった螺旋」2つの世界が交差する「あやうい饗宴」は、それぞれ虐げられる側だった実咲と中の内心がこぼれるショートストーリー。
作者の意図は
あとがきにあります。
くどい食パンでもソフトなパンの間にはさんだらみんな食べてくれるんじゃ・・・
う、うーん・・・。
読んだ感想としては、消費期限をはるかに超えてしまった生肉をスポンジケーキで挟んだような読了感と言いますか・・・。
何故、スポンジケーキの方を表題作にしちゃったんだろう。
おとぎ話のような切ないけれど優しいお話の後に来る強烈な病み系ストーリーは、結構な威力があるので耐性ない方は要注意。
人によっては、かなり地雷があるかと思われるので、病み系どんと来い!な人にオススメです。
■ブックデータ
タイトル:ラクダ使いと王子の夜
著 者 緒川 千世 形 態 コミック レーベル ビーボーイコミックス 出 版 社 リブレ
【管理人評価】
・満足度 ★★☆☆☆(前半2作品評価3.5、その他評価1.5)
・イメージキーワード
「病み系」「執着」「束縛」「ほのぼの」
・読後の感想
「病み系耐性ない人は読んじゃダメ・・・レベルなお話でした」
【購入可能サイト】
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【余談】
変なこと書いていいでしょうか・・・。
BLコミックでも小説でもたまに気になるのが、BLにおいての”乳○” の扱い。
BLの世界で、何かとても重要視されているような気がして違和感を覚えるのは管理人だけでしょうか。
誰もがそこ、いいところじゃないと思うし。
お約束のように(特に小説の中で)クローズアップして描かれる”乳○” 描写には、日々もやもやっとするのです。
そんな思いと共に、「くさった螺旋」でやけに存在感ある”○首” の描かれ方が、物語の気持ち悪さと相まって生理的に受け付けなかったりします。