塩の街(角川文庫)


タイトル塩の街
著 者有川 浩
形  態文庫
レーベルKADOKAWA / 角川書店
出 版 社角川書店

それは、べた甘なラブストーリーでした

管理人が大・大・大好きな「図書館戦争」作者有川 浩さんの初期作品。
“自衛隊3部作”と呼ばれる作品の一つ。

あらすじからの印象で何となく避けてきた作品を読んでみたならば・・・予想外な作品だった「塩の街」。

それでは、レビュー開始。

ごめんなさい、ちょっと避けていた

冒頭にも書きましが、気に入った作家さんの作品は一気読みする主義ですが、有川浩さんの作品の中でもこちらのシリーズは避けていました。

いえ、よく広告は目にしていたんですよ?

塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。

SF・ファンタジー(?)的な設定のあらすじを読んで、うん、何かこれ暗い話じゃない?

管理人は、報われない話が嫌いです。
ハッピーエンドではない物悲しいエンドってあるじゃないですか。
悲しいような切ないような・・・そういう物語のラストをよく管理人は”叙情的な物語”と呼びます。

塩の街含む自衛隊3部作・・・この叙情的な物語の匂いがぷんぷんする!

明るく笑える「図書館戦争」には、はまったけど、自衛隊3部作からは、真逆な雰囲気しか感じない・・・。

そういう訳で今一購入までいかなかったのですが、図書館で発見しまして読んでみることに。

日常のリアル

行き倒れた青年が少女に助けるところから始まるこの物語。
“塩害”について、説明されることなく物語が進んでいきます。

異なる登場人物視点の短いストーリーが連なる構成。

ああ、暗い  

最初悲しい気持ちに落とし込まれた物語は、読み進める内に、意外な方向へ。

あれ?こんな話だったの?

と思わず呟く管理人でした。

大雑把で口が悪いむさい雰囲気のおっさんと高校生女子が2人で暮らしているその理由も物語が進むまで明らかにされず、その関係が読み取れず。

その2人が、塩害に襲われている世界で、出会う人によって紡がれるストーリー。
そして、それは”塩害”に深く関わることになる  

愛は世界なんか救わないよ。賭けてもいい。

登場人物の一人が吐く台詞。
この台詞が物語の中心でしょう。

君たちの恋は○○を救う。

あえて伏字にさせていただきました。
愛は、恋は、何を救うのか?

この台詞が物語の中心で、だからこそのべた甘なラブストーリーなんですね。

正直これは、大人向けな物語だと思いました。

過激なHシーンがないけれど、R18にしている「TL小説」の記事にするか迷った位。
迷った末に、やっぱりリアル露骨なHシーンがないので、こちらの「少女小説」カテゴリに書くことにしました。

読みながら思ったことは、やけにリアルだと思うのは”塩害”にあった街の描写と現実の震災が被るんです。

これ、震災を経験した人は、結構読むのがきついんじゃないかなと思います。
というか、私がちょっと思い出してダメな箇所がありました。

日常の些細な人の言動、悪意。
そうした描写がやけにリアルで、”大人向け”と言いたくなる部分です。

実は超べた甘ラブストーリー

読んでいて意外だ!と思ったのがラブストーリー部分。

えっ、これってこんなにべた甘い物語だったんだ!?
と、心の中で叫び声をあげた位。

塩街や人の描写のやけにリアルな描写の中に混じるべた甘ラブストーリー。
このバランスは、他の作家さんの作品では見たことがないかもしれない。

この作品は、有川 浩さんのデビュー作で、受賞後電撃文庫で出された訳ですが、電撃文庫って少年向けライトノベルレーベルですよね?

このべた甘ラブストーリー部分を男性は、受け入れられるのかなぁと思わず思った位の極甘な雰囲気を醸し出してました。

自衛隊3部作と呼ばれるこの作品。
甘さ、シリアルが他にない形で交じり合うラブストーリーなので、自衛隊に興味がなくても楽しめる作品でした。

図書館戦争ファンとしては、ちらっとその片鱗があちこちに散らばっているのも楽しかったです。

■ブックデータ

タイトル:塩の街
著  者  有川 浩
形   態 文庫
レーベル 角川文庫
出 版 社 KADOKAWA / 角川書店
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★☆☆(星評価3.5)
 ・イメージキーワード 
  「震災」「恋愛」「自衛隊」「善悪」「SF」
 ・読後の感想
  「甘い!甘いわぁ!」

【購入可能サイト】
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【余談】

有川 浩さんの作家デビュー作であるこちらは、受賞規約により電撃文庫から刊行されました。
でも、すぐにハードカバー化されたという異色の経緯を持つ作品。
編集者が最初から大人向け、ハードカバーとして出したがった理由も作品を読んで納得です。
心理描写が物凄く細かいんですね。

個性的なキャラクターが吐き出す心情に、思わずどんどん引き込まれていってしまいました。

少しの深刻さ、人のいやらしさ、甘すぎる恋愛描写と、管理人の好みから微妙に外れるものが多いにも関わらず、他の3部作も読もうかなと思わせられる。
そんな作品でした。