恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。―妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら―


タイトル恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。―妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら―
著 者永野 水貴
イラストとよた 瑣織
形  態 文庫
レーベル
出 版 社TOブックス

絶望から始まる物語

愛する人に死地に赴くように頼まれて、絶望しながらもその願いに応える主人公。

切ないを通り越して重く苦しい雰囲気で物語が始まる「恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。―妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら―」(タイトル長い)。

伯爵令嬢ウィステリアの悲運の始まりとは—。

それでは、レビュー開始。

最愛の人からの宣告

「簡潔に、言う。ロザリーの代わりに—《未明の地》に行ってくれ」

“生ける宝石”と称される輝く銀色の髪と黄金色の瞳を持つブライト・リュクス=ルイニングに告げられた言葉に主人公ウィステリア・イレーネ=ラファティは、絶望する。

《未明の地》とは、情人には耐えられぬ濃い瘴気に満ち、その瘴気に適応した怪物どもが跋扈する影の世界。

その地の瘴気が異常な程濃くなった際に瘴気を調節する者として選ばれるのが“《未明の地》の番人”。

調節すると言いつつも《未明の地》に足を踏み入れて、二度と戻らないいわば生贄。

タイトルに「死んでくれと言った。」とありますが、直接死んでくれと言われてはいないです。
が、まあ、死んでくれと言われたも同然ですよね。

悲惨過ぎて救いがない恋

いやもう序盤の主人公の重苦しい回想は、読む人を選ぶかもしれません。

結婚適齢期を逃してでもウィステリアが、人々に忌み嫌われる禁忌である《未明の地》の研究を続けたのは、恋するブライトの為。

思いを告げず、研究の功績をあげることで身分の高いブライトと結婚出来る立場を得ようと努力する主人公は、正直重い女。
正直、ちょっと怖い位の執念深ささえ感じてしまうのは、私だけでしょうか?

そんな状況の中《未明の地》の番人に妹であるローザが選ばれてしまったことから、事態は急展開。

最愛のブライトは、ローザを愛していることを自覚し、ローザを死なせたくないが為に唯一身代わりになれるウィステリアに身代わりを頼む。

ただ振られるだけだったなら、ここまで悲惨な形にはならなかったでしょう。
最愛の“彼”が、彼の愛する人の為に自分に死ねと言う。

そして、色々な要素が重なったとはいえ、反発せずに従ってしまうウィステリア。

いやいや、いくら愛しているかといっても両想いでもなく、しかも相手が愛している人間の為に死にに行くとは・・・やっぱり重たい女ですよ。

しかも、最愛の彼がもっと性格が悪ければいいものの、誠実な優しい性格(にも関わらずローザの為を思い残酷なセリフを放つ)な訳ですよ。

救われないよね・・・。

最愛の人との再会。—と見せかけて

最愛の人の願いを叶え《未明の地》に消えたウィステリア。

生きてます。

誰からも存在を忘れられつつ《未明の地》で生きていたウィステリアの目の前に現れた最愛の人・・・と、瓜二つの青年。

まあ、何故瓜二つなのかといえばお察しですが、その彼との恋愛が始まるかと思いきや・・・始まらないような。

最愛の人のそっくりさん・ロイドは、自分が王女と結婚する為の成果として、ウィステリアが持つ聖剣を《未明の地》から持ち帰ることが目的。

期間を設けて、ロイドが瘴気に耐えられるだろう間だけ、共に過ごし聖剣を掛けて勝負することになる訳ですが・・・。

読み人は、カタルシスを待つ

ロイドとの生活の中で、明かされていく《未明の地》でのウィステリアの過酷な生活。

番人とは言うものの行ったら二度と戻れないと言われる《未明の地》で生き残ってますからね。

帰る場所もなく、自分を待つ人もおらず、過酷な世界で生き延びるウィステリアの軌跡は、やっぱり重苦しい気持ちにさせられます。

そんなギリギリの生活の中に現れた最愛の人のそっくりさんですよ。

そしてそのそっくりさんロイドは、最愛の人・ブライトの〇〇(あえて伏せる)。
そっくりなのには理由があり、ロイドとブライトは、近しい関係にある訳です。

《未明の地》でウィステリアの過酷な生活を間近に見たロイドが、はたしてブライトがしたことを知ったらどうなるのか?

2022年6月現在、Kindle本は2冊目まで出ていますが、ロイドが事実を知らされることはなく平行線のまま。

魔女のように悪し様に言われているウィステリアが、実はそうではないことを目の当たりにして色々思うところがあるロイド。

その彼が、真実を知った時に物語は大きく動き出すでしょう。

そのカタルシスを迎えた結末次第で、評価が大きく変わりそうです。

■ブックデータ

タイトル:恋した人は、妹の代わりに死んでくれと言った。―妹と結婚した片思い相手がなぜ今さら私のもとに?と思ったら―
著  者  永野 水貴
イラスト とよた 瑣織
形   態 文庫
レーベル —
出 版 社 TOブックス
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★☆☆(星3.5)
 ・イメージキーワード 
  「重苦しい」「重たい女」「秘めた恋」「ファンタジー」「年の差」
 ・読後の感想
  「早く結末を読みたい」

【購入可能サイト】
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