おこぼれ姫と円卓の騎士 17 新王の婚姻 (ビーズログ文庫)


タイトルおこぼれ姫と円卓の騎士 17 新王の婚姻
著 者石田 リンネ
イラスト起家 一子
形  態文庫
レーベルビーズログ文庫
出 版 社KADOKAWA / エンターブレイン

おこぼれ姫の即位譚、ついに完結!

ソルヴェール国の第一王女・レティーツィアは、将来自分が“女王になる”ことを知っていた―。

優秀な兄二人を差し置いて王となることが決まった王女・レティーツア。
誰もが予想しなかった”おこぼれ姫”である彼女は、実は自分が王となることを知っていた  

それぞれの”家”の思惑を背負った兄達との駆け引きや自分を助ける12人の騎士達を集めていく”おこぼれ姫”シリーズ。

とうとう17巻(番外含めると全18巻)で完結しましたね!
という訳で、今回シリーズ全体を通したシリーズレビューです。

優秀な兄の影に隠れた”おこぼれ姫”

兄二人があまりに優秀な為、それぞれの家の思惑が絡み内紛になることを恐れた王によって、次の王となることを定められた第一王女レティーツィア。

物語は、王の専属騎士団(ナイツ・オブ・ラウンド)を揃える為、第一騎士として騎士デュークを勧誘するところから始まりました。

ソルヴェール国の人間ならば、誰もがあこがれる王の為の騎士。

しかし、王位を争う兄達二人は、将来のナイツ・オブ・ラウンドを見据えて早くから優秀な人材を己の騎士として配置しており、目ぼしい人材はあらかたどちらかの騎士として囲いこまれた状態。

そんな中、自分が王位についた時の為、いかに優秀な人材を揃えるかという”騎士集め”がテーマの一つでした。

兄二人共に属さないデュークの立場とは?

“心優しい王女様”であるレティーツィアが王位を継ぐことについての周囲の侮り。それをことごとく覆していくところも見どころの一つ。

特に1巻は、

「おこぼれ姫の愛人と呼ばれるのは願い下げ」

というデュークとの攻防が楽しいストーリーでした。

タイトルおこぼれ姫と円卓の騎士 1
著 者石田 リンネ
イラスト起家 一子
形  態文庫
レーベルビーズログ文庫
出 版 社KADOKAWA / エンターブレイン

でも、1巻を読んだ時には、ここまで恋愛要素が欠落しているストーリーになるとは予想していませんでしたが。

騎士と王女なんて、ときめき設定な癖に・・・。

王女の誇りと賢さ

簡単に言うと今まで誰にも(王を継ぐ者として)注目されて来なかった王女の立身出世の物語です。

恋愛物語ではなく政治のお話です。

それぞれの立場に縛られた兄達と政敵としての殺伐としたやり取りと、その裏でそれとなく示される互いへの気遣い。

心優しい王女としての顔と将来国を統べる者としての責任を知る未来の王としての厳しい決断の数々。

シリーズ1冊目で第一騎士となるデュークとの攻防から二人の恋愛物語になるかと思いきや・・・甘くない。むしろ、辛い?

期待されていなかったお姫様が、実は有能で兄達と渡り合い、周辺諸国の王族と関わりながら次々と起こる難解な問題を乗り越えていく。

そうした意味でスカッとする物語ではあるのですが、管理人が求める少女小説の甘さはないなぁというのが本音。

未来の王となることを幼い頃から自覚してきた主人公なので賢く、自分に厳しく、そしてプライドが高いんです。

お姫様でなく(未来の)王様であることが、糖度が不足する原因でしょう。

ファンタジー要素の魅力

おこぼれで王位を継ぐことになった王女様の快進撃。
それに加えて物語を面白くしているのは、ファンタジー要素でしょう。

何故、主人公レティーツィアは、誰もが予想しなかった自分の王位継承を知っていたのか?

夢の中で出会う過去、そして未来の王達との会話。

彼女が隠している秘密とは?

このファンタジー要素で、断然話が面白くなってます。

終わり良ければ全て良し

ソルヴェール国の第一王女・レティーツィアは、将来自分が“女王になる”ことを知っていた―。

何度も繰り返されるこのフレーズが物語りの根幹としてあり、優秀な人材集めと共に王としての道を駆け上がっていく物語。

恐らく、最初から誰と誰が騎士になって・・・という筋書きは決まっているのだろうと、シリーズ中盤は淡々と読み進めていたところがありました。

最終話に向けた突然の物語の急展開に驚きつつも、きっとそれも予定調和だったのだろうと。

ぶっちゃけドキドキワクワクするような部分が少ない、感情移入しづらい物語だなぁという印象だったのですが、読み終えた評価は「あれ、意外と面白い話だったかも」です。

きっと、最終巻になってだいぶ甘さが増したからだと思います。
ええ、いきなり。

サブタイトルが「新王の婚姻」なので、多少とも甘くなるだろうとは思っていたのですが。

うん、これはいい甘さ。

予想通りだった部分と全く予想していなかった部分が半々。
今までの経緯全てがうまくまとまって、満足感がありました。

全部で18冊にもなるシリーズだと、だらだらと迷走して内容がよく分からなくなってくる・・・ということがあるのですが、こちらはそれがありませんでしたね。

着実に段階を追って、まあ最終回に向けての展開は急といえば急だった気がしますが、ぶれてはいないです。

まとまったと言っても、急展開になる事件が事件なので全てが穏便に収まる訳でもなく・・・複雑な立場におかれた人間も。

電子書籍化される前に紙本を読んだ人のレビューを読んでしまったのですが、不評だった某悪役の扱いも個人的には、すんなり受け入れられました。

それぞれ収まる場所に収まった人々に対して、色々な思いが溢れるというか、これからどうなるんだろうなぁという考える余地がある、余韻のある終わり方だったと思います。

最後の円卓に集う過去・未来の王達の言葉が、また素敵。

もっと読みたくなるような、でもここで読み終えるからこそいいのかもしれない。

普通、シリーズ物は物語のはじめから中盤に掛けて読んでいる自分の気持ちが盛り上がることがほとんどなのですが、何故かこの作品は最終巻になってときめくという珍しいパターンでした。

うん、つまり終わり良ければ全て良し。

ラストがどうなるかで、その作品の評価ががらりと変わる。
そういうことだと思います。

■ブックデータ

タイトル:おこぼれ姫と円卓の騎士 17 新王の婚姻
著  者  石田 リンネ
イラスト 起家 一子
形   態 文庫
レーベル ビーズログ文庫
出 版 社 KADOKAWA / エンターブレイン
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★★☆(星評価3.5)
 ・イメージキーワード 
  「騎士」「成り上がり」「甘くない」「ファンタジー」「政治」
 ・読後の感想
  「最終巻が一番わくわく!」

【購入可能サイト】
・Amazon
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・Renta!
なし
・eBookJapan
おこぼれ姫と円卓の騎士17 新王の婚姻(eBookJapan)
・honto
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【余談】

巻末に作者の次作品「茉莉花官吏伝 皇帝の恋心、花知らず」の試し読みが載っているのですが、結構なボリュームです。

人気シリーズの作者ですので、このまま”おこぼれ姫”シリーズの読者を次シリーズに引っ張っていきたいという意図からでしょうが、管理人は一言言いたい。

うん、ちょっと邪魔。

最終回で、色々な余韻に浸っている管理人は、異なる世界観の物語を読む気になれず、読まずにスルーしております。(管理人にとっては、珍しいことです)

それだけ、今回の作品の最終話が感慨深い、余韻を残すものだということでしょう。
広告要素の高い試し読みは、ほんのさわりの数ページだけにしてほしいなというのが本音です。
だって、結局どんなに量が多く読めても、購入しないと結末までたどり着けない訳ですし。