タイトル | 紅玉は終わりにして始まり 時間旅行者の系譜 | |
原 題 | RUBINROT:Liebe geht durch alle Zeiten | |
著 者 | ケルスティン・ギア | |
翻 訳 | 遠山 明子 | |
形 態 | 文庫 | |
レーベル | 創元推理文庫 | |
出 版 社 | 東京創元社 |
タイムトラベラーの遺伝子を持つ家系
物語は現代。
高校のカフェテリアで主人公グヴェンドリンは激しいめまいにマッシュポテトをぶちまけた。
意味ありげなプロローグから一転、現代の描写が続く「紅玉は終わりにして始まり 時間旅行者の系譜 」
シリーズ一作目になるこちらの作品の冒頭のキーワードは”めまい”
家族みんながいとこのシャーロットのめまいを待ち望むその理由は。
レビュー開始です。
その時の備えは準備万端です
タイムトラベラー物といえば、期せずして時を越えてしまう。
そんな物語の始まり方がほとんどですが、こちらの作品は違います。
家族で唯一タイムトラベラーの遺伝子を持ついとこのシャーロットは、生まれてからずっといつ過去に飛ばされても困らないように遊ぶ暇なく教育を受けている。
そう準備万端。
後は、タイムトラベルの予兆である“めまい”を今か今かと周囲含めて待ち望む日々。
でも主人公グヴェンドリンは蚊帳の外。
タイムトラベラーの遺伝子を引き継ぐモントローズ家でも、タイムトラベルに関する知識は当事者以外には秘密めかして詳細は伝えられない為。
主人公のいとこにしてタイムトラベラー遺伝子保持者、才色兼備な優等生・シャーロット。
娘を溺愛するヒステリックな母親グレンダ。
にこりともしない厳格な祖母レディ・アリスタ。
祖父の妹である大おばマドレーン。
優しい母親グレイスと弟のニック、妹のキャロライン、そしてどこか謎めいた執事ミスターバーナード。
そんな面々とお城のような大きな屋敷に一緒に暮らしている。
タイムトラベラーの遺伝子を持つ人間以外は普通の人達・・・かと思いきや、主人公は幽霊を普通に目にしておしゃべりしちゃったり。
大おばさんのマドレーンは突然幻視(予言視?)しちゃったりする。
そして突如明らかになる真実。(いや、予想は早々につくけれども)
タイムトラベラー遺伝子保持者は、シャーロットではなく主人公グヴェンドリンだった!
魅力的な小道具・設定の数々
生まれた時からタイムトラベラーとしての教育を受けていたシャーロットと違って、突如タイムトラベラーとなってしまったグヴェンドリン。
提示される数々の設定がわくわく感をアップします。
1. タイムトラベラーは12人。それぞれをあらわす宝石がある
主人公は12人目。最後の一人で宝石はルビー。
言い伝えられている文言は、 “紅玉は終わりにして始まり”
2. タイムトラベラーの家系は男系と女系の2つがある
ひとつは主人公の女系モントロール家。男系はド・ヴィリエ。
2つの家は微妙に中が悪く、両家の恋愛はとかく問題が引き起こされうまくいかないとか。
そんな微妙な関係のド・ヴィリエの男性ギデオンと主人公はパートナーを組むことに。
3. タイムトラベラーはクロノグラフによって安全で管理された時間跳躍を行う
タイムトラベラーの遺伝子を持つ者は、力を発現させた後、何もしないと勝手に力が発動し跳んでしまうとか。能力というより発作に近い現象?
それを管理するのが“クロノグラフ”
各タイムトラベラーを表す宝石が埋め込まれたそれは、力を発現した後に血液を垂らすことによって使えるようになる代物。
これによって時間跳躍の時間や跳躍先の年代等を指定することが可能になり、安全で快適な跳躍が出来るように。
4. タイムトラベラーを保護(監視)する秘密結社がある
5.クロノグラフに全てのタイムトラベラーの血をしみこませると何かが起こる
秘密結社の最大の目的にして、物語の要。
ああ、設定だけでも凄い量になる。
これ、よく3冊に収まりましたね。
相棒は美形な完璧青年
服装や身なりを完璧に整えて、跳ぶ先は、過去のタイムトラベラー達の下。
事情により全てのタイムトラベラーの血を一からクロノグラフに染み込ませる為、グヴェンドリンよりも2年前から行動している(つまり2歳年上)のがもう一人のトラベラーであるギデオン・ド・ヴィリエ。
ダークブラウンの巻き毛を肩まで垂らし、きらきら輝く目は緑色。
シャーロットと同じく生まれた時からあらゆる教育を受けていた為、文武両道、その上とびきりハンサム。
突如何も知らないグヴェンドリンをパートナーとすることになった彼は、彼女を無能扱いして遠ざけようとするむかつく相手。
ギデオンの立場から物事を考えればちょっと理解も出来ますけどね。
10年間も一緒に研鑽したシャーロットではなく、何一つまともな知識がないグヴェンドリンと危険な場所に投げ出されるのは、酷でしょう。
ならば自分ひとりで任務をこなすから、大人しくしていて欲しいと言いたくなる気持ちも分かります。
まあ、不可抗力な事情で投げ出された主人公からしたら腹が立つ以外の何物でもありませんが。
不信と複数の謎の中での恋愛模様
突然タイムトラベラーだということが判明した主人公グヴェンドリン。
何故、グヴェンドリンではなくシャーロットが遺伝子保持者とされたのか。
クロノグラフを完成させる過程で存在が浮かび上がる妨害者。
パートナーであるギデオンや秘密結社の面々からの不信の眼差し。
愛すべき親友レイニーの助け。
何の心構えもなく放り込まれた主人公が掴み取る真実は何なのか。
久々に夢中になって読み進めました。
不満といえば、海外文学によくある心理描写の分かりづらさでしょうか。
これはもう、文化の違いと言ってしまえばそれまでのことなんですが、国内の作品と比べると物語への独特の入りづらさを感じます。
いや、主人公の語り口とか翻訳が上手いのか違和感なく入り込めるのですが、ギデオン!
パートナーである彼の気持ちが今一分かりづらく。
押したり引いたりすかっと通り抜けたりするような恋愛模様。
何考えてるんだ彼は!とシリーズ通して思うこと度々でした。
シリーズ3作一気読みの勧め
この作品は、合間合間に挿入されるタイムトラベラーの家系図や秘密結社の日報(?)タイムトラベラーに関する謎めいた文言等が、かなり重要でして。
絶対!確実に読み返したくなること必須。
ということで、シリーズ通して一気読みすることをオススメします。
シリーズ2作目「青玉は光り輝く」は、主人公2人が本格的にタイムトラベルをして活躍するお話メイン。
タイトル | 青玉は光り輝く 時間旅行者の系譜 | |
原 題 | SAPHIRBLAU:Liebe geht durch alle Zeiten | |
著 者 | ケルスティン・ギア | |
翻 訳 | 遠山 明子 | |
形 態 | 文庫 | |
レーベル | 創元推理文庫 | |
出 版 社 | 東京創元社 |
シリーズ3作目「比類なき翠玉」は、恋愛が動き出すだけでなく秘密が暴かれそうになったり主人公の身の上にとんでもないことが起こったりハラハラし通しの手に汗握る展開。
タイトル | 比類なき翠玉〈上〉 (時間旅行者の系譜) | |
原 題 | SMARAGDGRÜN | |
著 者 | ケルスティン・ギア | |
翻 訳 | 遠山 明子 | |
形 態 | 文庫 | |
レーベル | 創元推理文庫 | |
出 版 社 | 東京創元社 |
タイトル | 比類なき翠玉〈下〉 (時間旅行者の系譜) | |
原 題 | SMARAGDGRÜN | |
著 者 | ケルスティン・ギア | |
翻 訳 | 遠山 明子 | |
形 態 | 文庫 | |
レーベル | 創元推理文庫 | |
出 版 社 | 東京創元社 |
並べてみると表紙のイラストも素敵ですね。
1作目は背中を向け合う主人公二人に銃と剣
2作目はパーティーに参加した時の二人。楽器を演奏するギデオンと杯を傾けるグヴェンドリン。燭台と印章指輪。
3作目は向かい合って花をお互いに差し出す主人公達。ビスケットと本と書類(系譜?)
タイムトラベル物ということで時系列がかなり入り組んでいますが、全てがしっくり収まるのは最後の最後「比類なき翠玉」になってから。
読み込めば、あっ!と思うような描写がちょこちょこあることに気付くでしょう。
ということで、今回はシリーズレビューとなりました。
ああ、面白かったしときめいたしとにかく楽しかったんだけど、うまく言葉にまとめられないなぁ・・・。
■ブックデータ
タイトル:紅玉は終わりにして始まり 時間旅行者の系譜
著 者 ケルスティン・ギア 翻 訳 遠山 明子 形 態 文庫 レーベル 創元推理文庫 出 版 社 東京創元社
【管理人評価】
・満足度 ★★★★☆(恋愛とファンタジー2つが楽しめる)
・イメージキーワード
「タイムトラベル」「ファンタジー」「三部作」
・読後の感想
「映画化された映像で観たいわこれ・・・。」
【シリーズ一覧】 1.紅玉は終わりにして始まり 時間旅行者の系譜 2.青玉は光り輝く 3.比類なき翠玉 上 4.比類なき翠玉 下
【購入可能サイト】
・Amazon
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【余談】
こちらのシリーズを知ったのは、Amazonの定額読み放題Kindle Unlimitedの中に「紅玉は終わりにして始まり」が入っていたから。
読み終えてそれがシリーズ物で、2作目以降がUnlimited対象でなかったと知った瞬間『ちっ!やられた!』と悶絶しましたが、そういえばこれR系小説じゃないじゃん!と気付き図書館サイトの所蔵リストをチェック。
その日の内に残りのシリーズ2作品を予約・受け取り、すぐに読み終えることが出来ました。
ありがとう図書館!
最近R系小説ばかりで遠ざかっていたけれど、無料で本を読めるという幸せを実感しました。
その日の内に予約出来たし、手にしたものは新品同様。
まさか私が最初の借り主?と思う程の備品だったので、あまり知られていない作品なのかなと思いました。
ファンタジー小説好きにオススメしたい作品です。