タイトル | 腹黒王子に秘密を握られました | |
著 者 | きたみまゆ | |
イラスト | NO DATA | |
形 態 | 文庫 | |
レーベル | ベリーズ文庫 | |
出 版 社 | スターツ出版 |
有能営業アシスタントの裏の顔
不動産会社で営業アシスタントとして働く主人公は、ふとした気の緩みから最も知られたくない秘密を社内の”完全無欠の王子様” に知られてしまう。
「仕事もできて美人で完璧な友野さんに、こんな趣味があったなんてね」
はたして主人公の運命は 。
それでは、レビュー開始。
営業アシスタントの秘密
正直、”ベリーズ文庫” というレーベルは苦手でした。
それは、このレーベル、基本設定が”現代”で登場人物が”社会人”なんですよね。
何というのでしょう、管理人は基本的に少女小説やR系小説にリアルは求めてないのです。
架空の世界観やファンタジーを楽しむことを主としている身には、ベリーズ文庫の世界観って現実世界に近過ぎて、興ざめすることが多いのです。
現実に近いけど、こんなこと本当にあるかな・・・と心の中で呟いてしまう時のテンションの下がりっぷりといったら!
が、これはさくさく読みました。
さくさくというか・・・面白いよこれ!
主人公・友野莉央(ともの りお)は不動産会社で営業アシスタントをしている二十七歳の女性。
どんな雑用でも文句を言わず率先してこなし、営業マンたちを完璧にサポートする莉央は、新人営業マンよりもずっと仕事が出来ると自負しており、正式に営業にならないかという誘いを断る日々。
その理由には、莉央が隠している”ある秘密” があるから 。
誰にも迷惑をかけないように、そして誰よりも早く家に帰るために
そう、彼女が会社の人にひた隠すこと、それはアニメや漫画が大好きなオタク。
何よりもBLを愛す隠れ”腐女子” であることだった
「仕事もできて美人で完璧な友野さんに、こんな趣味があったなんてね」
腐女子のリアルと完全無欠の王子様
せっせと帰宅し、せっせと来るイベントに向けてせっせとBL漫画を描く莉央。
あ、何だろうこの親近感。
商業誌を読むのが専門の管理人ですが、立派なオタク。
そして身近に今もイベントに参加する友人を持つだけに、主人公の行動がやけにリアルに感じますよ。
『意味がわかりませんが、これは腐女子用語ですか?』
そんな編集からの赤字に作者がパソコンの前で顔を覆ったというエピソードがあとがきで語られている通り、かなりの実体験が盛り込まれているかと。
そんな趣味にひた走る主人公の秘密が、営業成績トップ・容姿端麗・誰にでも屈託なく向けられる笑顔という”完全無欠の王子様” 金子 敦(かねこ あつし)にばれたことから物語は急展開。
「内緒にしてほしいなら、俺の言うことを聞けるよな?」
八方美人のさわやかイケメンキャラの仮面の下から現れたのは、人をいたぶるような意地悪な微笑。
「めんどくせーんだよ。他の課の女にいちいち言い寄られんの。彼女がいるって言えば、誘われなくて済むだろ」
付き合うフリをすることになった、二人の関係はどうなるのか?
笑いとリアル、そして甘さのさじ加減
この作品、管理人の好みにぴったり!というか、凄く楽しめました。
恋愛だけじゃない面白さがあるんですよね。
きっと口止めの代わりに、私にいやらしいことをするんだ!エロ同人誌みたいに!
「弱みにつけ込んで体を要求するほど、女に困ってねーよ」
脅迫されて慄く莉央の妄想に即座に入れられるツッコミとか。
「イヤだよ!この人はしょせん三次元の男だよ?」
「次元を超えて貶されたのは、初めてだな」
付き合えばいいと言う友人に反論する莉央の発言とか。
「ファーっ!」
金子の甘い言動(完全無欠の王子様モード)にパニックになって莉央があげる奇声とか。
甘い恋愛物というよりコメディ要素がめちゃくちゃ楽しいです。
あと、莉央の職場での仕事ぶりや周囲の反応も見どころかと。
年に数回妙に早く帰る時期がある(イベント参加の為)だけで、「遠距離恋愛中の彼氏」がいると女性社員に意図的にたてられる噂。
セクハラめいた男性社員の言動。
毎朝、トイレ掃除をするまめさとそれに対する女性社員の反応。
クライアントの子どもとのやり取り。
無邪気なようでどこか読めないものを抱える後輩の”柴崎くん”。
バカ者。二次元にいくらつぎ込んでも交際も結婚もできないどころか、ヤツらに指一本ふれることもできないということに、そろそろ気付きなさい
オタクな娘を心配する母親との攻防や、仕事の中で浮かび上がる”家” に対する家族のエピソード。
「猫かぶってごまかしてんじゃねーよ!」
「い、痛い。痛い痛い痛いっ!」
完璧にアイアンクローを決められたりと、甘いようで全然甘くない”黒王子” とのやり取りとか。
そうなんです、全然甘くないんですよ黒王子とのやり取り。
でも、それが逆にリアルというか、興ざめしない要素はそこだったのかもしれません。
これでもかと現れる登場人物達とのやり取り。
甘くない素の顔でやり合う二人の会話の面白さ。
特に、主人公の趣味に対する愛情溢れるオタク発言は、笑わずにはいられない・・・。
そして、甘くないからこそ横槍であっさりと付き合いを解消してしまうともう先が全く読めず。
興ざめしない程度のリアルさとおかしさと甘さ。
そのバランスが絶妙な、まさに管理人の好みそのものな物語でした。
ああ、でもオタクな主人公の発言や挙動不審っぷりが凄く楽しかったのは、管理人がまさにどっぷりな”オタク” であるからで、全くそんなものに興味も理解もないよという一般人(?)にとってはどうなんだろう。
もしかして、逆に引いてしまい物語に入り込めないかもしれないですね。
■ブックデータ
タイトル: 腹黒王子に秘密を握られました
著 者 きたみまゆ イラスト NO DATA 形 態 文庫 レーベル ベリーズ文庫 出 版 社 スターツ出版
【管理人評価】
・満足度 ★★★★★(面白い!)
・イメージキーワード
「オタク」「脅迫」「仮面」「社会人」「純情」「腹黒」「笑える」
・読後の感想
「笑えて心が温かくなってそして恋愛の甘さありの物語でした」
【購入可能サイト】
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【余談】
“ベリーズ文庫” といえば、<TL小説>のレーベルだと思うのですが、R系な過激描写が全くないので<少女小説>としてレビューしました。
27年間趣味に突っ走ってきた主人公の純情ぶりも萌えポイントの一つ。
まあ、登場人物達は十代でも少女でもない立派な社会人ですが。
苦手だと思っていたレーベルですが、読めば自分好みの作品が見つかるものですね。