溺れるナイフ (別冊フレンドコミックス)


タイトル溺れるナイフ(1)
著  者ジョージ朝倉
形  態コミック
レーベル別冊フレンドコミックス
出 版 社講談社

少女時代から思春期のヒリヒリするような想い達

2016年11月映画公開に先立って、Yahoo!ブックストアでプレミアム会員1~3巻無料。
4~5巻半額以下・・・。
そんなキャンペーンにほいほい乗せられて、読みきっちゃいましたよ全17巻!

電子書籍って、本当歯止め効かない・・・。
いや、でも読み始めたら最後まで読んじゃいますよこの作品。

少女時代の全能感から思春期のヒリヒリするようなのたうつような心情が描写が秀逸な「溺れるナイフ」。

それでは、レビュー開始。

華やかな都会からある日突然ど田舎へ

そのころ わたしはまだ12歳で
全てを知ることができる
全てを手に入れることができる
全てを彼に差し出し共に笑い出す権利が
自分にのみ有るのだと思い込んでいた

印象的なモノローグから始まる「溺れるナイフ」。

夏休みももう終わらんばかりのある日。
小学6年生の夏芽(なつめ)は、中学生向け読者モデルの撮影現場から、両親に拉致されるようにして”東京まで5時間のマニアックな観光地”に引っ越すことになる。

遊びといえば、渋谷でショッピング・・・な華やかな環境から、どこまでも海!なド田舎へ。

家の裏にある海には鳥居があり、

神さんが住んどるけー海にゃ入ったらあかん怖いトコ

真夜中、夏芽はその”怖い海” で印象的な少年と出会う  

印象的な少年が持つ”力”と主人公が持つ”力”

真夜中にキラキラと発光するような妖しく強烈な印象を残す少年は、長谷川航一朗(はせがわ こういちろう)。

「神さん」がいる海に入ってはいけない  

荒らせば海が大荒れし、荒らしたヤツも変な死に方をする。

祟りが大人を含めて本気で信じられている浮雲町で、「神さん」のいる海に入り、夏芽を海に突き飛ばし、彼だけは傲岸不遜な態度でやりたい放題する。

アホ、俺はええんじゃ
この町のモンは全部俺の好きにしてええんじゃ

大昔は地主で代々土地を守っていた一族。
分家が神主業を担う、その一族の待望の長男。

その土地の権力者としての道が定められている彼が持つ”力”。
夏芽が持つ”美” という名の”力”。

夜の海では神秘的に見えた彼も、学校の中では腹が立つヤツ。

夏芽は航一朗こと”コウちゃん” に反発し張り合いながらも強く意識していく  

都会と因習の世界、異なる立ち位置

「読者モデル」「CM」「写真集」など現代的・都会的な世界に身を置く主人公・夏芽と「神さんに近い者の血が流れる者」「火祭り」「ウチに生まれた最後の神さんの形見である数珠」など閉ざされた因習の世界に深く結びついているコウ。

全く交わることがないように思える世界を持つ二人が、関わりあうことで生まれる刺激。
夏芽はコウから刺激を受けて、世界が変わっていくのを感じる。

  嗚呼!
世界は素敵 私は無敵!

そんな完璧な世界が、一年後の火祭りの夜、壊される。

事件の後の長い闇

  俺が側におると しんどいんじゃろ?」

12歳の全能感、輝かしい世界が壊されて二人は離れることになる。

行っちゃった 私の神さん

夏芽の輝かしい時の終わり。
明らかになるコウの抱えるもの。

それぞれ離れた世界で暗闇に落ちた二人は、光の世界に戻れるのか。

色々な人との係わり合いから必死に光に向かおうとする夏芽。
夏芽と離れ、暴力にひた走るコウ。

あらすじ紹介みたくなっちゃいましたが、二人に関わる人間がたくさん現れるので、もっと複雑な物語で、本当読み始めたら止まらなくなります。
幼い頃の全能感とか、人の好奇心のいやらしさとか、思春期の頃の生々しい感情を思い出しました。

最後の最後まで想像がつかず、読み終わった後、非常に切ない気持ちが残りました。

うん、映画化されるだけある、引力のある物語でした。

■ブックデータ

タイトル:溺れるナイフ
著  者  ジョージ朝倉
形   態 コミック
レーベル 別冊フレンドコミックス
出 版 社 講談社
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★★☆(星4.5評価)
 ・イメージキーワード 
  「モデル」「因習」「レイプ」「神様」「思春期」「あがく」
 ・読後の感想
  「切ないような哀しいようなラストが個人的に苦手(でもいい作品)」

【購入可能サイト】
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【余談】

小説やマンガ原作がアニメ化・映画化されるという話がありますが、管理人は、あまり映像化には心惹かれません。

小説は小説、マンガはマンガで満足するもので、わざわざ生身に置き換えてみたいとは思わないんですね。
そう、小説は小説、マンガはマンガ。
管理人の中では、それは現実世界とはっきり分かたれているのです。

この作品も映画化された訳ですが、管理人はきっと観ることはないでしょう。
この長い話を1本の映画の中にぎゅっと詰め込むのはかなり難しいだろうし、物語の中の”事件” を生々しく再現されるのを見たいとは思わないからです。

小説やマンガに対して、映像はあまりに”言葉足らず” に感じます。
(この人物がこういう行動するのは、こういう理由があるからなんだよ)
原作を知っていると、映像作品に対して、そう呟きたくなることが何度もあります。

だから、原作付き映像作品を見る時は、必ず原作を読んでから観ようと思ってます。

まあ、そんな管理人ですが、映像化されて違和感がなかった作品が一つだけあります。

それは「デスノート」。
死神のCGとか完璧じゃないですか!
時代は変わったなぁとしみじみ思いつつ、それ以外の作品には、やっぱりがっかりし続けています。