最果てのロクデナシ (セシル文庫)


タイトル最果てのロクデナシ
著  者樹生かなめ
イラスト一ノ瀬 ゆま
形  態文庫
レーベルセシル文庫
出 版 社コスミック出版

ロクデナシの立ち位置

読んでいてモヤモヤというか、何やら不可解な気持ちになったのが「最果てのロクデナシ」含む”ロクデナシ” シリーズ。

今回は、「ロクデナシよりロクデナシ」と併せたシリーズレビューとなります。

里和宣章(さとわ のぶあき)の人生は甲斐佳之(かい よしゆき)という男で狂った。

そんな一文から始まる「最果てのロクデナシ」。
このロクデナシな男・甲斐(かい)がしたことが本当にありえない程鬼畜な所業。
例え作り物の世界の中の話でも、同じ目に遭いたくない・・・と思う程の悲惨さです。

鬼畜に魅入られた男・里和(さとわ)は、彼から逃れる為に自殺を決行しようとしたところを仙太郎爺に制止され、何故か彼が住む銚子で彼の息子・千里(せんり)と3人で暮らすことになる。

実は私管理人は、方言とあまり縁のない地域に住んでいまして。
ただ、両親が銚子(方面)出身なんですよ。
確かに「だっぺ」は語尾に付けてた。同い年の従兄弟は標準語だけど、親戚のおばさんとか。
でもここまで凄くないというか微妙な違和感。
エセ関西弁を話す人に関西人が憤る姿をよく目にしてきましたが、ちょっと気持ちが分かった瞬間。
やっぱり方言は地元以外の人が使うと不自然なんですね。

と、余計な話に逸れましたがレビューに戻りましょう。

シリーズ通した物語の中で戸惑ったのは、このロクデナシこと甲斐佳之の立ち位置。

通常の作品だとロクデナシと主人公の攻防(恋愛的な)がストーリーの主筋となるでしょう。
が。
無駄に見目の良いこの鬼畜ロクデナシ男。
立ち位置がよく分からない。

というのも、主人公里和に惚れている男がもう一人。
そう、甲斐の前から姿を消して潜伏していた銚子で一緒に生活していた仙太郎爺の一人息子・千里。

彼は皮肉な偶然で、甲斐と雰囲気がとてもよく似た青年。
うん、これ恋愛対象になるの?

押せ押せで押し流される主人公。

でも、元々ゲイではなかった主人公。
そして、甲斐によって相当悲惨な目に遭った訳ですよ。
いくら長年一緒に生活したからといっても流されるかなぁ・・・。

そして主人公の里和に異常な執着を見せる鬼畜ロクデナシ甲斐は、何故か鬼畜仲間の設楽(したら)と関係があって粘着されているし、この設楽の性格がまたちょっとおかしい。

「甲斐は僕のものになったのーっ」
「甲斐、若いくせに痴ほう症になっちゃったの?ボケないでーっ」

貴公子然とした容姿で現在は社会人。
若社長の地位にある設楽が、嫉妬で宝剣を片手に叫びまくるテンションが、かなり怪しい。

それに押されまくる鬼畜ロクデナシ。
あれ?鬼畜ロクデナシは鬼畜だから里和一筋に突っ走るかと思ったら違うんですね?

起承転結の結がない

微妙に押し流されたところで終わり、「ん、これでおしまい?」というような場面で終わった「最果てのロクデナシ」。

2作目の「ロクデナシよりロクデナシ」を見て、何となく感じる違和感というかモヤモヤの原因を理解した気がします。

タイトルロクデナシよりロクデナシ
著  者樹生かなめ
イラスト一ノ瀬 ゆま
形  態文庫
レーベルセシル文庫
出 版 社コスミック出版

無駄に美しく強烈な鬼畜ロクデナシとよく似た顔で里和を恋い慕う千里。
どっちが主人公とくっつくの・・・?

主人公が甲斐を心底嫌っているのが分かるのですが、かといって千里が好き好きという感じでもなく可愛い・・・うん、これ恋愛?

BLって攻めと受けの恋愛を楽しむものだと思うのですが、甲斐と千里どっちに感情移入すればいいのかよく分からず。
でもタイトルに「ロクデナシ」とあるからには、ロクデナシ甲斐とラブラブになるの・・・?なりそうもないけど・・・。

そして終わり方が唐突。
物語の中には起承転結があるのがセオリーですが、結がない。
いや、もっといえば転がないような・・・。

ジェットコースターのように山あり谷ありなストーリーだと感情が揺さぶられて物語に引き込まれるのですが、これはわらわらと主人公・千里・そしてロクデナシ達がご対面してはすっと話が途切れるようなそんな印象を受けました。

Amazonの定額読み放題サービス「Kindle Unlimited」で購入したこの”ロクデナシシリーズ”、2冊で止まっているようですが、次の作品が出ても多分購入しないでしょう。

■ブックデータ

タイトル: 最果てのロクデナシ
著  者  樹生かなめ
イラスト  一ノ瀬 ゆま
形   態 文庫
レーベル セシル文庫
出 版 社 コスミック出版
【管理人評価】
 ・満足度 ★★☆☆☆(星1.5評価)
 ・イメージキーワード 
  「鬼畜」「ロクデナシ」「山場なし」
 ・読後の感想
  「気持ちが盛り上がることなく終了」
【シリーズ一覧】
 1. 最果てのロクデナシ
 2. ロクデナシよりロクデナシ

【購入可能サイト】
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【余談】

この”ロクデナシシリーズ”は、元々は別のシリーズのスピンオフのようなものらしいです。
鬼畜ロクデナシ甲斐とちょっとオカシナ貴公子設楽との話は別の作品「貴公子の理不尽な愛情(ダリア文庫)」になるそう。

あれ?じゃあ甲斐はやっぱり単なる悪役としての登場なんですかね?このロクデナシシリーズの中でロクデナシといえば彼しかいないのですが・・・。

無駄に存在感のある、そしてしつこい鬼畜ロクデナシ(とその恋人?設楽)のおかげでちょっと話がぼやけた気がします。