鳴けない小鳥と贖いの王 ~彷徨編~ (キャラ文庫)


タイトル鳴けない小鳥と贖いの王 ~彷徨編~ (キャラ文庫)
著  者六青みつみ
イラスト稲荷家房之介
形  態文庫
レーベルキャラ文庫
出 版 社徳間書店

四十九年に一度の祝祭と邂逅

大陸中央に位置する“聖域”で開催された四十九年に一度の祝祭が開催される中、主人公・ルルは樹齢千年を超える大樹の根元に横たわり、息絶えようとしていた少年を見つける。

両目を一文字に切り裂かれ、胸に禍々しい黒い矢を受けた少年を救ったのは、ルルが持つ“癒しの民”の力。

わずか5歳の時の一瞬の邂逅。
後にルルは自分が助けたその少年が、自分の“運命の片翼”だったと確信する。

故郷を失い獣姿で放浪する主人公が、早々に“運命の片翼”と再会しつつも想いを通じ合わせることが出来ずにすれ違いを繰り返すシンデレラストーリー『鳴けない小鳥と贖いの王 ~再逢編~ (キャラ文庫) 』。

それでは、レビュー開始。

“癒しの民”である主人公の受難

主人公・ルルは、翼神を祖先とするとされる“癒しの民”。
その名の通り、傷や病を癒す力を持ち護樹が生えた聖域から離れて長く生きることは出来ない。
だが、“運命の片翼”と絆を結ぶことができると護樹ではなく“運命の片翼”から滋味を受けて生きていくことが出来るようになる。
その為、一族の者は15歳になると“運命の片翼”を探す度に出て、見つからない者は力尽きる前に諦めて聖域の森へと戻ってくるという。

だが、ルルが旅に出たのは12歳の時のこと。
旅に出た経緯は記憶になく、ただ家族と引き離され住み慣れた土地から逃げ出した恐怖と孤独が時折断片的によみがえるだけ。

護樹から離れては長く生きられない“癒しの民”であるルルは、幼い頃に出会った“運命の片翼”を唯一の希望として探し続け3年の時が経っていた。

もふもふいちゃラブかと思いきや

故郷を逃げ出す時に鳥に似た獣姿になっていたルル。
3年もの間に美しかった羽根は艶を失い、消し炭のようにみすぼらしく黒灰色となり、汚れて嫌な臭いを放つようになり、罵声を浴びせられ、追い払われる日々。
“運命の片翼”と再会することも出来ず弱り切ったまま、忍び込んでいた民家から追い出され、蹴り殺されそうになった時に助けてくれたのは、“運命の片翼”である青年だった。

可哀想に、こんなにボロボロになって。もう大丈夫だ。俺が助けてやるから

主人公、冒頭のずたぼろの獣姿で死にかけている状況から、早々に“運命の片翼”と再会しちゃってます。

それも泥まみれの汚らしい小さな毛玉状態のルルを放っておけず思わず手を出して助けてしまうというお人好しというか、優しさ全開のルルの“運命の片翼”・クラウス。

嘴や翼らしきものはあるけれど羽はない。
謎の黒い毛玉をせっせと世話をするクラウスと“運命の片翼”に出会い守られる幸福に酔いしれるルル。

いやもういちゃいちゃですよ(毛玉と人間だけど)。

もふもふ好きにはたまらない展開ですが、物語は思わぬ方向へ。

伝えられない想い

主人公であるルルは“運命の片翼”と再会出来たと大喜びですが、クラウス視点は『ただ弱った生き物を拾い、救った』だけな訳ですよ。

ルルは、もう本能的に“運命の片翼”のことが無条件に好き。
そして、クラウスは汚い毛玉だったルルを看病して可愛がる様子からも、とても愛情深い。

早々に事情を説明して、想いを告げればすぐにでもラブラブになるんじゃないかなーと思われるのですが、そんな簡単にお話は進まない。

命を繋ぐ護樹から長く離れ、死を覚悟する程弱り切っていたルル。
獣姿で鳴き声を発することも出来ず、人間に戻ることが可能になっても声を出すことが出来ず。

クラウスから語られる二人の邂逅の切っ掛けとなる事件。
恐らくクラウスが探している人物が自分であるという喜びとそれを伝えられないもどかしさ。

—その『捜し人』は、きっと僕だよ!

この子が、あの子だったらよかったのに

嚙み合わない二人の想いにじれったく思いつつも、幸福になる予感しかないのですが。

鳴けない小鳥と贖いの王

個人的に私の好きなBL作品って“泣ける”BLが多いです。
そして、少女小説やTL小説と比較して、BL小説は心情描写が細やかな作家さんが多い気がします。

主人公に感情移入して、胸が引き裂かれるような思いや切ない気持ちになったり。

間違いなくこの作品は“泣ける”小説です。

鳴けない小鳥=弱り声を発して思いを告げることが出来ないルル
だとしたら
贖いの王=クラウス。

贖う あがな・う〔あがなふ〕
罪のつぐないをする。
—大辞泉より

あの優しいクラウスが贖わなければならないこととは。
あんなにいちゃらぶだった二人の関係が、どうして・どこまで拗れ、壊れていったのか。

号泣必至な物語は1冊では終わらず3冊目に続くようです。(2022年6月時点)

■ブックデータ

タイトル:鳴けない小鳥と贖いの王 ~再逢編~
著 者  六青みつみ
イラスト 稲荷家房之介
形   態 文庫
レーベル キャラ文庫
出 版 社 徳間書店
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★★★(好き!)
 ・イメージキーワード 
  「ファンタジー」「獣人」「運命の恋」「泣ける」「すれ違い」
  「両片思い」
 ・読後の感想
  「泣ける・・・本当泣けるわ。」

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【余談】

このもどかしさ、切なくどうしようもない感じは、何か別の物語で覚えがあるぞ・・・と思ったら、人魚姫でした。
愛らしく愛嬌のあるルルが、悲しみに引き裂かれてしまう様は、まさに・・・です。

タイトル鳴けない小鳥と贖いの王 ~再逢編~
著  者六青みつみ
イラスト稲荷家房之介
形  態文庫
レーベルキャラ文庫
出 版 社徳間書店

2冊目で完結していない(3冊目未発表)と知った時は、思わず叫びそうになりましたわ。
物語は最後まで一気読みしたい派です。