愛の蜜に酔え!(花丸文庫)


タイトル愛の蜜に酔え!
著  者樋口美沙緒
イラスト街子マドカ
形  態文庫
レーベル花丸文庫
出 版 社白泉社

「でも、優しい気持ちになる。」

優しさがテーマの物語。

樋口美沙緒さんのムシシリーズを意識していなかった時に購入した1冊。
ムシシリーズ2冊目のこちらは、1作目とはがらりと変わった雰囲気のお話です。


タイトルに「愛の蜜」という言葉があると、エロいことを想像してしまいますが(管理人だけ?)、エロよりも心理描写が素晴らしい作品です。

そういえば、ムシシリーズタイトルには必ず「愛」という言葉と「蜜」といったムシに関係するキーワードが含まれてますね。

今回はハイクラス・クロオオアリとロウクラス・クロシジミの主人公との恋愛物語。

タイトルキーワードに含まれる「蜜」とは、クロオオアリとクロシジミとの間でやり取りされるアリの蜜「蟻酸」のこと。

「・・・お前ってマジ天然の乙女だよな。」

主人公の黒木里久(くろき りく)は天涯孤独な身の上。
病弱だった里久は幼い頃、孤児院からクロオオアリの家に引き取られます。
クロシジミである彼は病弱で、クロオオアリの庇護(蟻酸)がなければ生きていくのが難しい。
そのこともあり、クロオオアリの一族はクロシジミを保護するよう法律が定められている。
名家の中でひっそりと養われる病弱な主人公。
そんな世界。

深窓の令嬢のように、屋敷の奥深くでひっそりと生きていた主人公が、オオアリクイの女王に言われて有賀綾人が通う高校(全寮制)に入ることから物語が始まります。

有賀綾人は、主人公里久が片思いをしているオオアリクイの王種。
次代の王になることがきたいされているが、全寮制の高校に入ってから音信が途絶えていた。

おとぎ話のような優しい世界

シリーズ1作目が高校生活メインの青春系だとすると、今回は過去の優しい時間を軸にしたおとぎ話と言っていいかも。

幼く病弱な主人公がベッドでつるバラの絡まるテラスを眺めながら大好きなオオアリクイの彼を待つ描写が印象的でした。

主人公がお姫様、相手が王子様。
そんなイメージがぴったり。

病弱で健気な主人公目線だからでしょうか。
世界は切ない程美しく、おとぎ話を思わせる描写が続きます。

いきなりのハードモード

彼が将来王になる為に生じている問題を主人公が解決出来るらしい。
そういう話で送り込まれた学園で再会した彼は酷く冷たく変わっていて・・・。

正直、彼が何故そんなに主人公に冷たいのか。
何をそんなに怒っているのか、途中までさっぱり分かりませんでした。

だから最初は、淡々と読んでいたのですが。

主人公の身に次々と起こる出来事にいつの間にか引きずり込まれて最後は夢中になって読み終えてしまいました。

主人公が大事に大事に抱えている思い出の数々・気持ちが印象的な場面の描写と共にすんなり入ってきて、後半はすっかり主人公と同化。

世界にどっぷり染まりました。

主人公も優しく、相手も優しすぎる程優しい。
優しい人だらけのこういう話は、実は管理人の好みとはちょっと外れるのですが、何だこの満足感。

まさか出だしの調子からここまで物語の中に引きずり込まれるとは予想も出来ず、意外な気持ちになると同時に、樋口美沙緒さんという作家さんを意識するきっかけになった作品でした。

うん、この作者にぶんぶん首根っこ掴まれて物語りの中に引きずり込まれる感じ、嫌いじゃない。
というか大好きです。

■ブックデータ

タイトル:愛の蜜に酔え!
著  者  樋口美沙緒
イラスト 街子マドカ
形   態 文庫
レーベル 花丸文庫
出 版 社 花丸文庫
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★★☆(感動!)
 ・イメージキーワード 
  「泣ける」「すれ違い」「切ない」「優しさ」「健気」
 ・読後の感想
  「泣き疲れました」
【シリーズ一覧】
1.愛の巣へ落ちろ! (花丸文庫)
2.愛の蜜に酔え!(花丸文庫)
3.愛の裁きを受けろ!(花丸文庫)
4.愛の罠にはまれ! (花丸文庫)
5.愛の本能に従え! (花丸文庫)

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