気高き豹と炎の天使(扶桑社BOOKSロマンス)


タイトル気高き豹と炎の天使
シリーズサイ=チェンジリングシリーズ
原 題Mine to Possess
著 者ナリーニ・シン
翻 訳河井 直子
形  態文庫
レーベル扶桑社BOOKSロマンス
出 版 社扶桑社

生き返る亡霊

サイ=チェンジリングシリーズ第4弾。
「気高き豹と炎野天使」は、豹チェンジリングとヒューマンの恋愛物語。

それでは、レビュー開始。

二十八歳のヒューマンの女性タリン・マッケイドは車の中で気持ちを静めていた。

すぐそこの道を横切ってバーに入り、目的の男性に声を掛ける。
それだけのことが、どうしても出来ない。

彼女が時間をかけて見つけだし、声を掛けようとしているのは、豹チェンジリングのクレイ・ベネット。

声を掛けられずその場から逃げ出したタリンに追いつくと、クレイは怒りを込めて言い放った

「おまえは死んだはずだ」

二人の間に横たわる過去

シリーズ第4作目の「気高き豹と炎の天使」は、物語早々不穏な空気で始まります。
クレイを頼りに来た癖に、会うことに怯えるタリン。

それは、二十年前にクレイが犯した罪。
そして、タリンが死んだことになった理由でもあるのですが  。

余談ですが、管理人はこのシリーズ2作目です。
シリーズ1作目の「黒き狩人と夜空の瞳」の後に、何故いきなり4作目を読んだのか。
それはKindle Unlimitedがその2作だけ対象だったからです。

一応、シリーズものですが主人公二人がその都度変わるので、順不同でもそれ程違和感なく読めるようですね。

冒頭で、1作目よりもあらゆる感情を抹消する教育プログラム<サイレンス・プロトコル>を推進する<サイ評議会>とその他の種族を中心とした反対勢力との溝が深まっているのは確かなようです。

1作目はサイである主人公と豹チェンジリングの男性の物語でしたが、今作は人間と豹チェンジリングが主人公。

人間・・・!

あまりに特徴がないので、1作目で全く存在感がなかった種族ですよ。
非力な人間である主人公タリンと比較して、豹チェンジリングであるクレイの獰猛さが強調されている気がします。

冒頭からいきなり、タリンがクレイにとって死者であったこと。
それが他ならぬタリンの意志によってなされたこと。
そして、2人の間の血なまぐさい過去が明らかになります。

「あなたがそっとしておいてくれないからよ、クレイ」
「でも気が気じゃなかった。少年院を出たとたん、あなたが追ってくるとわかっていたから。」

あれ・・・?クレイさん、ヒーローじゃなくてまるっきり悪役ポジション?

「お前はおれのものだ。おれが守るはずだったんだぞ!」
「あなたのものだったことなんて一度もないわ!」

あまりの2人の認識の違いに絶句するレベルです。
タリンを保護すべき者としていたクレイと完全拒否するタリン。
つまりは、タリンにとってクレイは・・・何なんだ?

二十年もの間タリンのことを”亡霊” として引きずってきたクレイが不憫・・・。

種の違い?

まだ少年だったクレイがタリンの為に犯した罪。
それは、人間であるタリンには許容しがたいものだったのでしょう。

読んでいると、何よりもタリンを守ることに全力を尽くすヒーローというよりは、軽々と人間側の常識を越えてしまった凶暴な男・・・という印象が否めません。

所有欲、そして凶暴性。
愛する人を守る為なら人殺しさえ肯定される豹チェンジリングの世界。
非力な人間であるタリンから見たら、DVやストーカーに近いのでしょうか。
(益々クレイ不憫・・・。)

1作目のサイと豹チェンジリングよりも根本的な恐怖という感情が2人の間にひびを入れている状況。

その恐怖が消えていないにも関わらず、助けを求めるタリンは、いくら追いつめられていても都合がいいような気がしないでもないです。

暴力を恐れるタリンと庇護欲と保護欲含めた愛情を否定されるクレイ。
暴力と恐怖とチェンジリングの”絆”と”伴侶”。

その深い絆について描かれた物語でした。

チェンジリングを中心に、異なる種族を伴侶としていく中で、<サイ評議会>と対立するものとして大きくなっていくグループ。

これから先は、その闘争がメインになるのでしょうか?

これから益々世界観が広がりそうなシリーズ。
既に12巻まで出ていますが、全部読んでみたいものです。
(問題は懐事情)

■ブックデータ

タイトル: 気高き豹と炎の天使
著  者 ナリーニ・シン
翻 訳 者 河井 直子
形   態 文庫
レーベル 扶桑社BOOKSロマンス
出 版 社 扶桑社
【シリーズ一覧】
 1. 黒き狩人と夜空の瞳
 2. 冷たい瞳が燃えるとき
 3. 氷の戦士と美しき狼
 4. 気高き豹と炎の天使
 5. 封印の獣と偽りの氷姫
 6. 燃える刻印を押されて
 7. 遠き記憶が輝くとき
 8. 裁きの剣と氷獄の乙女
 9. 藍色の瞳の女神と戯れて
 10.雪の狼と紅蓮の宝玉(上・下)
 11.金眼の黒狼と月下の戦姫(上・下)
 12.黒曜石の心と真夜中の瞳(上・下)
                   以下続刊
【管理人評価】  
・満足度 ★★★★☆(星3.5評価)  
・イメージキーワード   
「暴力」「亡霊」「狂気」「恐怖」「幼馴染」「獣・人外」「所有欲」
・読後の感想   
「何だかんだいっても面白いし、好きな世界観」

【購入可能サイト】
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