愛の罠にはまれ!(花丸文庫)


タイトル愛の罠にはまれ!
著者樋口 美沙緒
イラスト街子 マドカ
形  態文庫
レーベル花丸文庫
出 版 社白泉社

何これ、恐ろしく深い。

読んだ後に、身を震わせた作品。
凄い・・・凄いわ。
何が凄いって管理人の全てのツボが詰まってる

樋口 美沙緒さんのいわゆる“ムシシリーズ”と呼ばれる作品の4作品目。
体調不良で寝込んでいた時に、大量に買い込んだ中の1つ。

最初に読んだのは、シリーズ1作目の『愛の巣へ落ちろ!』。
その時は、ここまで衝撃を受けませんでした。

感想の前に、簡単な説明を

ムシシリーズとは

樋口 美沙緒さんが書いているこのシリーズは、限りなく現代に近い空想世界が舞台。
ただし、このシリーズが“ムシシリーズ”といえる最大の特徴。それは、

遠い昔、地球に栄えていた文明は滅亡し、人類は生き残るために強い生命力を持つ節足動物と融合した。

つまり人間の中にムシの遺伝子が入ってしまった訳ですよ。
ということで、このシリーズ。
話の中に昆虫の名前がばんばん出てきます。

人には必ず“起源種”とする昆虫があって、何かしらの特性が現れるのです。
例えばシリーズ1作目では、タランチュラを起源種とする人間が(クモの)巣を張ったり、ハチ種の人間が爪の先から毒針を出したり。
フェロモンなんて言葉が普通に出てきます。

そして、ムシシリーズの最大のキーワードである“ハイクラス”“ロウクラス”。
動物でも昆虫でも強者と弱者はあるもの。
何が起源種であるかによって、体格さえ異なる世界。
そんな世界で生まれる弱肉強食の意識。

ムシシリーズには、そんなムシの特性と弱肉強食世界の意識が絡み合って他の作品にない独特の深みと世界観が生み出されている気がします。

犯した罪の重さを抱える主人公、絶対的王者の立場なヒーロー

シリーズ初と言われる“ハイクラス”である主人公・篤郎。
過去に罪を犯し、その罪の重さに潰されそうになっているところから物語は始まります。
“ハイクラス”である筈の彼が”ハイクラス”に見えない程、自分の犯した罪に自らも傷ついて、何度も過去を振り返りながら何とか平穏に生活しているところに過去を知る人間と再開していくことで波風が立っていく。

“ハイクラス”でありながら”ロウクラス”を知る主人公。
“ハイクラス”の中の”ハイクラス”であるヒーロー・兜。
(BLの相手役の呼び方ってヒーローでいいんだろうか・・・。)
見所はこの2人の立ち位置の違いじゃないでしょうか。

自他共に認める最低野郎だった過去を持ち、罪の意識に地を這うような生活をしている篤郎の繊細さとハイクラス中のハイクラスとして常に正しい道を歩いてきた兜。

傷ついた篤郎を兜が優しく癒して・・・で終わればよくある話。

篤郎の愛し方と兜の愛し方のあまりの違いに、そりゃうまくいかないだろうとは思っていたものの。

深い、恐ろしく深すぎるよっ!

だばだばと読みながら涙を流したり、ひええええええ!と肝を冷やしたり、まさに物語の中に引きずり込まれました。

いやもうでしょう。テーマは愛としか言いようがない。

まさかBLでこんなに引き込まれることがあろうとは・・・恐ろしい。
作家の方の力量にも愕然です。

何だか2~3冊を一気に読んだような密度が濃い話だと思います。
他の作品には、載ってるSS(ショートストーリー)がないことからして、ページ数ぎりぎりだったんでしょうか。

凄く物語が終わった「その先」を読みたくて仕方がありません!

しばらくはこのシリーズ、この作家の方の作品を読み進めようと思います。

■ブックデータ

タイトル:愛の罠にはまれ!
著  者  樋口 美沙緒
イラスト 街子 マドカ
形   態 文庫
レーベル 花丸文庫
出 版 社 白泉社
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★★★(大絶賛!)
 ・イメージキーワード 
  「贖罪」「愛」「泣ける」「深い」「病んでる」「衝撃」
 ・読後の感想
  「愛・・・。」
【シリーズ一覧】
1.愛の巣へ落ちろ! (花丸文庫)
2.愛の蜜に酔え!(花丸文庫)
3.愛の裁きを受けろ!(花丸文庫)
4.愛の罠にはまれ! (花丸文庫)
5.愛の本能に従え! (花丸文庫)

【関連作品レビュー】
【BL小説レビュー】愛の巣へ落ちろ!(花丸文庫)
【BL小説レビュー】愛の蜜に酔え!(花丸文庫)

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【余談】

この作品を楽しめたのは、幾つかの要因もあるかと思うので記載。

・シリーズ1作目『愛の巣へ落ちろ!』既読
(シリーズの基本設定把握、学生時代の兜の姿を読んでいた)
・シリーズ3作目『愛の裁きを受けろ!』が未読
(篤郎の極悪非道時代を読んでいない)

“ムシ世界”という独特の世界観に慣れていたことと、“持てる者”である兜の飄々とした学生時代の姿を読んでいるから余計に入り込めた気がします。
逆にシリーズ3作目の主人公悪役時代を読んでいたら、今作の主人公に感情移入しづらかったかなと。
後日、3作目も読んで思いました。
3作目から4作目を書いちゃう作者・・・凄い!