犬、拾うオレ、噛まれる (ラルーナ文庫)


タイトル犬、拾うオレ、噛まれる
著  者野原 滋
イラスト香坂 あきほ
形  態文庫
レーベルラルーナ文庫
出 版 社株式会社シーラボ

ヤバイ、病み系BLか・・・と思いきや

かなりガチなストーカーシーンから始まる「犬、拾うオレ、噛まれる」。
ヤバイ、これは後味良くない系作品か・・・!
思わず陰鬱な気分になって読み進めたのです。

が。

それでは、レビュー開始。

『お前・・・異常だよ』

主人公・紺(こん)が、数ヶ月前に分かれた伊勢谷貴史(いせや たかふみ)に、嫌がらせ電話をしているシーンから始まる「犬、拾うオレ、噛まれる」。

うわ・・・これ、ガチな病み系か・・・。

かなり気分悪くなりそうな陰鬱なストーリー展開を覚悟する出だし。

ところが!でした。

制裁者の登場

「騒がないで」

かなりぞっとするようなストーカー行為をした数日後、紺はアパートで見知らぬ”兄ちゃん” テツロー(仮名)に部屋に押し入られ、監禁されてしまう。

意外と整った顔(略)
白い歯を覗かせている笑顔は愛嬌があり、馬鹿っぽい。

ヤクザではないらしい彼の目的は、明後日まで紺を部屋に監禁すること。

二人のやり取りから、紺のストーカー行為や普段の生活、そしてストーカーをしている相手の伊勢谷貴史という人間について、語られていく。

貴史と数ヶ月前まで付き合っていて、その出会いは塾だったこと。
貴史は、予備校の講師でありその前は高校で働いており、紺から熱烈につきまとって交際したが、捨てられたこと。
明後日はその高校の百周年の記念式典があり確実に出席するだろうこと。

そして、その日に紺が有休を取っていること。

昼休みは毎日おなじ牛丼屋でおなじご飯を食べ、夕飯は毎日同じコンビニ弁当とビール。
生活感のない部屋。
テツローに部屋に押し入られ、拘束されても動じる様子がなく、食事をすれば味が分からないという。

常人とは異なるどこかいびつな紺の生態。

そして、そんな紺を部屋に監禁するという荒業に出ているにも関わらず、どこかあけっぴろげで人間らしいテツローとのやり取り。

ストーカー行為が脅迫行為にまで発展したその制裁として、脅迫返しとしてテツローに犯されてしまう訳ですが  

主人公の衝撃の過去、そして世界は変化する

いや、もうこれは正直物凄い”胸糞悪い”(失礼)物語だと思ったのです。
陰鬱で吐き気がするようなキモチワルイ話・・・そんな管理人の予想は、突然覆されました。

どこかいびつで壊れた人間にみえる紺の過去。

その事実が明らかになると同時に、まるでドミノ倒しのようにパタパタと鮮やかに切り替わる世界。

え、あの始まりで、どうしてこんな話になった?

脅迫の域に達したストーカー行為、暴力、死、その他もろもろ、衝撃的な、人によっては受け付けないだろう描写があります。

が。
最後、管理人ぼろぼろ涙をこぼしながら読みました。

全てを読み終えて、どこかほっとするような心が温かくなるような物語。
そう、これは”救い” の物語。

タイトルと序盤からは、全く予想がつかないこの物語。
読了感はかなり良いです。

収録話

紺の豪快な料理の腕前とテツローのやんちゃな過去が垣間見える「首輪は、どっちだ」(エロ多目)。
いちゃいちゃ買い物シーンの電子書籍購入特典SS「犬、照れるオレ、蹴られる」。

どちらもテツロー視点のイチャイチャ・ラブラブシーン満載なお話でした。
何だかんだいって紺の重たい愛情をテツローは喜んで受け止めていくんでしょうね。

■ブックデータ

タイトル:犬、拾うオレ、噛まれる
著  者  野原 滋
イラスト 香坂 あきほ
形   態 文庫
レーベル ラルーナ文庫
出 版 社 株式会社シーラボ
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★☆☆(星3.5評価、本編だけなら星4評価)
 ・イメージキーワード 
  「ストーカー」「病み系」「報復」「救い」「べた甘」「泣ける」
 ・読後の感想
  「こういう意表をつかれる物語好き。最後まで読んで良かった」

【購入可能サイト】
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