天使の影~アドリアン・イングリッシュ1~ (モノクローム・ロマンス文庫)


タイトル天使の影
原 題Fatal Shadow
シリーズアドリアン・イングリッシュ
著  者ジョシュ・ラニヨン
翻 訳冬斗 亜紀
イラスト草間 さかえ
形  態文庫
レーベルモノクローム・ロマンス文庫
出 版 社新書館

BLというより海外ミステリー

BL小説というより、海外ミステリーの登場人物がたまたまゲイだった。
そんな雰囲気の「天使の影~アドリアン・イングリッシュ1~」。

月曜日の朝、ロサンゼルスで書店を営む主人公にもたらされた知らせとは。

それでは、レビュー開始。

月曜の朝の不吉な知らせ

主人公の元に不吉な知らせを持ってやってきたのは、二人の刑事。

「ハーシーは昨夜、自分のアパートの裏路地で刺殺されて発見されました」

告げられたのは、主人公アドリアン・イングリッシュの高校時代からの友人であり、一年くらい前から彼の書店で働いていたロバート・ハーシー。

「彼とあなたは恋人関係でしたか?」
「いいや」
「だがあんたはホモセクシュアルなんだろう?」

友人の死によって、主人公の日常がかき乱されていく。

深まる疑惑

二人の刑事の内、主導権を握りアドリアンに疑惑の目を向けるのは、リオーダン。
軍隊風に短く刈った金髪と黄色がかった琥珀の目をした男らしさの固まりのような男。

それに比較して主人公のアドリアンは内省的というか厭世的。

ジーンズに白いシャツの平凡な格好に、特に周囲に対してゲイだとアピールをすることもない。
ただ、昔お気に入りの”ゲイチェック”リストを冷蔵庫に貼ったりと、歪んだユーモアあり。
恋人と別れ、今は一人。

「ランチを食べにいらっしゃいよ」

アドリアンの心配をし、”運命の相手”という言葉が大好きな長身で美しい黒人ゲイであるカフェ・オーナー。

アドリアンの書店に集まる”共犯同盟”というミステリライターの集まりでのミステリー談義。
(なんとアドリアンもミステリーを書く。)
メンバー達の現実の事件に対する好奇心。

『あなたが、殺したのよ』

殺されたロバートの別れた妻からの怨嗟に満ちた言葉。

『私はあなたの力になりたいんだ。』

事件について近づいてくるボーイタイムズの記者。

あからさまに疑惑の目を向けてくる威圧的な刑事・リオーダン。

はたして友人のロバートを殺したのは誰なのか?
どんな理由からなのか?

主人公のアドリアンも、最初から何かを隠している雰囲気。

そして、店の中が荒らされたり、無言電話や謎めいた言葉や花が届くようになったり。

次第に判明する事件の全体像とは  

全体的に陰鬱なその理由は

海外小説は、独特な雰囲気を持つものも多いですが、こちらの作品。
BLというよりはミステリーの比重が重い為、あまりラブラブ・いちゃいちゃな雰囲気はありません。
おしゃれで美しく女言葉な黒人カフェ・オーナーのクロードは、日本の感覚でいうゲイに近いのですが、主人公は内省的でおしゃれでも何でもない、憂いを持ったアドリアン。

彼視点で語られる物語は、何故かもの静かで陰鬱とさえいえる雰囲気です。

彼が厭世的な理由。
それはゲイであること以上に彼が心臓に抱える爆弾のせいかもしれません。

発作によって気を失って倒れた主人公を起こすリオーダンの言葉

「おねんねの時間はおしまいだ、お姫様。」

離れて住む過保護で子離れしていないような母親・リサ。
食事の世話をするクロード。

男性ですが、主人公は儚いお姫様タイプといえるのかもしれません。

こちらの作品、全5巻になるシリーズもので、シリーズ1作目である天使の影は序章といえるでしょう。

いちゃいちゃラブラブな雰囲気にはならないので(行為シーンはあるけど)、そうした甘い話を読みたい人よりもミステリーが読みたい人にお勧め。

ミステリーという大筋は変わりませんが、BL要素は作品によって大きく変わるので、シリーズ作品はそれぞれレビュー予定です。

個人的には、この作品の最後の最後の展開に、
「・・・え?」
と、あ然とした人間の一人です。

あれ、そんな伏線あったっけ?と思える結末。
作者は意図的に伏線を散りばめていたのでしょうが、やはり海外作品は、勝手が違うなぁとしみじみしました。

BL作品らしくない海外BL作品である今作。
ミステリー好きな管理人的には、結構楽しめた作品でした。

■ブックデータ

タイトル:天使の影
著  者 ジョシュ・ラニヨン
翻  訳 冬斗 亜紀
イラスト 草間 さかえ
形   態 文庫
レーベル モノクローム・ロマンス文庫
出 版 社 新書館
【シリーズ一覧】
 1. 天使の影 ~アドリアン・イングリッシュ1~
 2. 死者の囁き ~アドリアン・イングリッシュ 2~
 3. 悪魔の聖餐 ~アドリアン・イングリッシュ 3~
 4. 海賊王の死 ~アドリアン・イングリッシュ 4~
 5. 瞑き流れ ~アドリアン・イングリッシュ 5~
【管理人評価】  
・満足度 ★★★★☆(星3.5評価)  
・イメージキーワード   
「海外BL」「ミステリー」「殺人事件」「刑事」「容疑者」「病弱」  
・読後の感想   
「甘さ控えめBLというよりミステリー」

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【余談】

カフェ・オーナーのクロードがアドリアンに言う”あんたの白馬の王子様” ことリオーダン刑事。

いやいやいや白人で金髪で琥珀の目をしている『色』だけ王子様っぽいけど、中身男の中のオレ様男ですから。

初対面の時、オフィスから出て行く際にデスクから取り上げた空き缶を握りつぶしてゴミ箱に放り投げたんですよ、この人。
何この男らしさの示威行動。

 そのシーンを読んで、一瞬何とも言えない気持ちになりました。