愛しのいばら姫


タイトル愛しのいばら姫
著  者凪良 ゆう
イラスト湖水 きよ
形  態文庫
レーベルno data
出 版 社プランタン出版

超美形毒舌モデルの裏の顔

ロシアと日本人のダブルで、女よりも美しいと言われる物憂げな美貌を引き立てるプラチナアッシュの髪色。
百八十センチを超す細身の長身、小さな頭。優雅に長い手足。

主人公は、中学生の頃からモデルとして働きメンズモデルとして長くトップの座にいる美山靫彦(みやま ゆきひこ)。

BL小説の中でここまで美形な登場人物はいるのか!?と思う程の美麗キャラ。

そんな彼が落ちた恋愛とは。

レビュー開始です。

王者は何をしても許される

部屋に帰宅すると電気がつかない。
ものぐさからライフラインを止められて知人の家に転がるトップモデル。

あるある。
外面は良いけれど、家に戻るとダメな奴というパターン。
そんなあるあるパターンから始まった「愛しのいばら姫」。

凄いです。
何が凄いって、リアリティが。

だって、主人公貴族的容貌の美麗モデルですよ?
あまりに世界が上過ぎて、入り込めるかー!と思いきや。
首根っこ掴まれてぐいぐい物語の中に引きずり込まれる。
そんな感覚を味わいました。

ぶっちゃけ、主人公の性格は悪く口もとびきり悪いです。
悪意というより、気位の高い高貴な猫を見ている気分。

「だから、無駄に敵を作んなって言ってんの」

思わず親しい知人が忠告する程、いばらのような言葉をためらわずに口にする美山。

人の好き嫌いが激しく、気分屋で毒舌家。
モデルとしても一流なら、気難しさも一流

これで仕事がいい加減なものだったら総スカン状態でしょうが、それでも使いたいと思わせるものがあるのでしょう。

主人公のアンバランスさ、攻めの懐の深さ

気位が高く毒舌な主人公。
モデルとしての自分に誇りともってプライド高く仕事をしているかというと・・・ちょっと微妙な感じが。

自分を見て勝手にイメージを膨らませていく周囲を冷めた目で見たり、『引退したら隠居する』・・・未来のことに対してどこか投げやりだったり。
何万もする服を部屋に放り出してぐちゃぐちゃになるままにしておいたり。
(モデルって身につけるものに愛情ないの?)

一番気になるのは、周囲との距離感と厭世的な雰囲気。
どこか他人をシャットアウトするような空虚さと退廃的な雰囲気をまとう主人公は、間違いなく複雑な人間でしょう。

それに比べると、美山の知人二人の先輩でありその二人の同郷の先輩である久保田は対照的。
美山の毒舌をあっけらかんと受け流し、誰に対しても大らかで親しげで。

美山の毒舌、強烈ですよ。
私だったら顔で笑っても、次からは距離を置くけどなぁ・・・と思う内容でも気にせず受け流すのは、久保田が大人だからか大らかだからか、それとも年上の余裕というものか。

何故?の答えが明快な物語

どんなに登場人物が素敵でも、時々首をひねる展開になる物語を結構目にします。
(え、なんでそうなるの?)
物語の中の人物の行動に首を傾げると、どんどんその世界から引き離されるような。

この物語には、全てに答えがある。
そんな明快さがあります。

主人公の回想にしばしば現れる母親との関係とそれがもたらしたもの。
何故主人公がトップモデルの地位に立てたのか
複雑怪奇なその性格で、何故相手に惚れたのか

その全てに答えがあり、その全てに違和感がない。

相手も魅力的だし、周囲に現れる人物達も印象的。

だけど、この物語の魅力はトップモデルという華やかな芸能の世界の中で、どう考えても性格が悪く複雑な美山という主人公に、いつの間にかどっぷりと感情移入してしまう。
そんなリアリティと吸引力のある人物描写でしょう。

オススメしたい一冊です。

■ブックデータ

タイトル:愛しのいばら姫
著  者  凪良 ゆう
イラスト 湖水 きよ
形   態 文庫
レーベル no data
出 版 社 プランタン出版
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★★★(満足!)
 ・イメージキーワード 
  「モデル」「芸能界」「ツンデレ」「癒し」「プロ意識」
 ・読後の感想
  「幸福な気持ちになれました。」

【購入可能サイト】

・Amazon
愛しのいばら姫
・楽天kobo
愛しのいばら姫【電子書籍】[ 凪良ゆう ]
・Renta!
愛しのいばら姫【イラストあり】
・eBookJapan
愛しのいばら姫【イラスト付】

【余談】

美山がライフラインを止められて転がり込む部屋の住人で、作品の中で最も親しいといえるのが、カメラマン・紺と美容師・綾野のゲイカップル。

 この二人を主人公とした物語が「365+1」。
作品としては、「365+1」の方が先に発表されたようです。
つまり、スピンオフなのですね。こちらの作品。
とてもそうは思えない程、深く作りこまれたお話でした。