乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…


タイトル乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…
著 者山口 悟
イラストひだか なみ
形  態文庫
レーベル一迅社文庫アイリス
出 版 社一迅社

十七歳庶民、我儘公爵令嬢に転生する

乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった主人公。
ゲームの中でハッピーエンドでは、国外追放。
バッドエンドでは攻略相手に殺害される?

バッドエンドオンリーな悪役令嬢に転生してしまった主人公の悪戦苦闘の物語。
悲惨な未来に立ち向かう主人公の前向き過ぎる行動に思わず笑わずにはいられない「「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」のシリーズレビュー。

それでは、レビュー開始。

転生したのはバッドオンリーな悪役令嬢

公爵の一人娘として可愛がられ、結果高慢ちきな我儘、お嬢様に育ったカタリナ・クラエス(8歳)は、案内されていたお城の庭園で転んだ挙句、岩に強く頭をぶつけて前世の記憶を思い出す。

オタク街道を突っ走り、寝る間も惜しんで乙女ゲームにいそしんだ挙句、寝坊して自転車に飛び乗り大通りに突っ込んで死亡。

物語り早々豪快な死に方が描かれる主人公。
この悲壮感のない始まり方は、まさにこの物語の序章にふさわしい。

買ったばかりの乙女ゲーム、結局ちゃんとクリアできないまま終わってしまった・・・。

のん気に前世を振り返る主人公カタリナ・クラエスは、思い出す。

サラサラの茶色の髪。しかし、水色の目はきゅっと吊り上がり気味で鋭く・・・はっきり言ってきつい印象が強い。

薄い唇を少し上げて微笑めばまさに『ザ悪役令嬢』といった風貌のカタリナ・クラエスは、前世で彼女がプレイしていた乙女ゲーム『FORTUNE・LOVER』の中の悪役令嬢。

ゲームがハッピーエンドならば、国外追放。バッドエンドなら攻略相手に殺されるというバッドエンドオンリーなキャラであることを。

元野猿、後オタク女子のたくましさ

「転生」「乙女ゲームの悪役に生まれ変わる」等、Web小説でも王道な設定のこの作品。
何と言っても魅力的なのは、主人公でしょう。

色々予想外、規格外な道を突き進む主人公の行動は、まさに予測不能。

記憶が戻ったばかり、ある意味攻略相手の一人であるドS王子とのフラグが立った地点。

「いえいえ。ジオルド様こんなかすり傷、きになさらないでください。だいたい、額の傷なんて前髪でぱぱっと隠せるのでなんの問題もございませんわ」

自分が乙女ゲームのキャラであることに気付かなかったこの時点で、『額の傷を盾に王子と婚約』することになる流れをぶった斬り、美しい王子を前に17年分の記憶を取り戻した自分が8歳の男の子に恋心を抱くないが見ているだけで癒されると内心にまにましながら鑑賞。

甘やかされて我儘放題な公爵令嬢の8年分の記憶+野猿&オタク女子な17年分の記憶。
ミックスされて、とんでもない方向に行こうとしています。

努力方向が明後日です

バッドエンドしかない自分の未来に青ざめつつもすぐに対策を練り始める姿は、前向きで悲壮感なし。

そしておバカです。

では、第一回カタリナ・クラエス破滅エンド回避のための作戦会議を開幕します。

豹変した自分に怪訝な目を向けられている自分が、これ以上おかしく思われないように誰にも相談できないカタリナが繰り広げるのは、議長カタリナ、議員カタリナ、書記カタリナ・・・カタリナによるカタリナの為のカタリナ達(?)の作戦会議。

うん、つまり自問自答。

そして導き出された解決策とは  

おかしいな、思い切り悲惨な結末を迎えない為の決死の努力の筈なのに、笑えるのは何故だろう。

癒される登場人物達

乙女ゲームといいつつ、どこか病んでいたりひねくれたり腹に一物も二物もあるような攻略相手達。

そして攻略相手を取り巻く登場人物達も複雑な思いを抱えている者ばかり。

そんな鬱屈した思いを抱える乙女ゲームの登場人物達の前に現れるその世界の常識を超える(元野猿&オタク女子歴17年)のカタリナ・クラエス。

カタリナとそれぞれの人物が絡む出来事について、カタリナと対象人物の視点が交互に描かれて物語が進んでいきます。

猪突猛進、わが道を行く主人公カタリナとその行動に感銘を受ける登場人物達。

はっきり言いましょう、ずれてます。

何も考えていないカタリナとそれを深読みし、勝手に癒されていく登場人物達。
その落差が面白い。

元々の乙女ゲームの中で悪役令嬢であるカタリナは、ゲームがハッピーエンドでもバッドエンドでも悲惨な未来しかなく、その事から分かるように、カタリナ以外の登場人物も相当こじらせてるし病んでます。

が、おかしいな。
次々と無意識の”人たらし”スキルを炸裂させるカタリナの前に、みんなどんどん癒されて健全になっていくんですけど・・・。

ということで、ヤンデレなどの泥っどろな展開やべた甘な恋愛を期待すると肩透かしになるでしょう。

主人公のおバカな暴走ぶりに笑いを誘われる、カラッと明るい物語でした。

■ブックデータ

タイトル:乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…
著  者  山口 悟
イラスト ひだか なみ
形   態 文庫
レーベル 一迅社文庫アイリス
出 版 社 一迅社
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★★☆(星評価4.0)
 ・イメージキーワード 
  「異世界転生」「乙女ゲーム」「悪役転生」「おバカ」「笑える」
 ・読後の感想
  「頭を使わず笑って楽しめるストーリー展開が◎」
【シリーズ一覧】
 1.乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…: 1
 2.乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…: 2
 3.乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…: 3
 4.乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…: 4
 5.乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…: 5
以下、続刊

【購入可能サイト】
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乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…: 1

【余談】

「異世界転生」「乙女ゲーム」「悪役転生」というキーワードを聞いたらぴんと来る方もいるでしょう。
こちらの作品はWeb小説発です。

最近になって作家ではない人達が自由に投稿するWeb小説を読み始めたのですが、色々お決まりのパターンがある独特さが面白いと思います。
同じパターンなのに、作者の方によってこうも話の方向が変わるのか!と驚かされた「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」。

普段べた甘な恋愛物語やどろどろした葛藤物語ばかりを読んでしまう管理人ですが、こういう何も考えずに楽しめるお話もいいものだなぁと思います。