ひだまりが聴こえる (CannaComics)


タイトルひだまりが聴こえる
著  者文乃 ゆき
形  態コミック
レーベルCannaComics
出 版 社プランタン出版

不自然でないリアルで優しい世界

久々に良作と呼ばれる作品に出会った気がする。
読了後、そんな気持ちになったのは「ひだまりが聴こえる」

「BL誌なのでどうかボーイズをラブさせてもらえないでしょうか。」

あとがきに担当から言われたコメントが書かれているように糖度は低めですが、それを補って余りある心情描写にやられました。

それでは、レビュー開始。

青年は青年と出会う

この辺じゃ君を雇う店なんてもうないと思うよ

アルバイトを断られ、お金もなく空腹を抱えた大学生太一(たいち)。
転落(比喩ではなく)し、落ちた先でお弁当を広げる杉原と出会う。

印象的なシーンから始まる物語。
初っ端からどこか静寂を纏ったようなそのシーンは、まさにこれからの物語を象徴するかのようです。

お弁当を恵んでもらった主人公太一が恩返しをしようと杉原に近づくところから物語は動き始めます。

BLというより友情物語

がさつで大雑把。だけど裏表がない太一と聴力にハンデを持つ為、どこか世界から一歩引いている杉原。
この2人のそれぞれの視点で物語が紡がれます。

ある日突然聴力を(完全ではないまでも)失ってしまったことにより、人との間に距離感を覚えるようになってしまった杉原。

そのもどかしさや複雑な思いの描写はとてもリアル。

いつの間にか築かれたその壁をぽーんと乗り越えて飛び込んできたのが太一。

でも、がさつで乱暴、近辺のお店全てからアルバイトを拒否されるというその性格は決して“良い人”ではないしノートテイク(難聴な杉原の為の講義ノート取り)も乱雑で役立っているともいえない。

だけど強く惹かれてしまうのは・・・。

というその辺の描写が秀逸で読み応えあり。
エロよりも友情・心理描写がある作品が好き!という方にオススメです。

■ブックデータ

タイトル:ひだまりが聴こえる
著  者  文乃 ゆき
形   態 コミック
レーベル CannaComics
出 版 社 プランタン出版
【管理人評価】
 ・満足度 ★★★★☆(優しいお話)
 ・イメージキーワード 
  「友情」「障害」「救い」「糖度低め」
 ・読後の感想
  「色々と考えさせられる良いお話です」

【購入可能サイト】
・Amazon
ひだまりが聴こえる (Canna Comics)
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【余談】

管理人がBLにはまるようになったのは、ここ数年のことですが、BLの魅力は他のTLやロマンス小説などに比べて心理描写が細かく描かれていることが多いことではないかと思い始めてます。

男×女だと何というかすぐエロ(=本能)に走るストーリーが目に付きますが、BLは男×男という一般的でない恋愛関係なだけに、何故その関係になったのか・・・という描写が多いせいか感情移入しやすいんですよね。

という訳で、糖度が物凄く低いこのお話は、BLというよりは友情物語に近く、BLが苦手な人にも読んでもらいやすい作品なんじゃないかなぁ・・・と思います。

が。

この作品、続編「ひだまりが聴こえる―幸福論―」があるんですよね。

「BL誌なのでどうかボーイズをラブさせてもらえないでしょうか。」
という編集者の方の要望を受けて、どのような作品になったのか。
後日レビューしたいと思います。